鎌倉祇園大町まつり

東のデザイナー/画家 久保田潤 西のデザイナー河田雅彦

祭が近づくと街に貼りだされる大町まつりのポスター。毎年楽しみにしていらっしゃるという方も多いのではないでしょうか? この原画は、大町を中心に鎌倉在住のアーティストやデザイナー、画家の方に描いていただこうという試みを始め、今年で3年目を迎えました。そこで今年の大町まつりのポスター原画を制作された大町在住の河田雅彦さんと昨年制作された材木座在住の久保田潤さんにお話しを伺いました。雰囲気が異なる二つのポスターを背に談笑が進む中、お二人の大町まつりに対して同工異曲なる視点が見られました。

お二人の鎌倉大町八雲みこし会(以下みこし会)に入ったきっかけは?

河田
「当時自治会の防災委員長をされていたみこし会の塚田さんに声をかけてもらった事がきっかけですね。初めてお神輿を担いだ年に子供が産まれた事もあって、お祭りを通して大町のコミュニティに溶け込むことができたらいいなと思う様になりました」
久保田
「偉いな~僕と違って。僕は、なんか成り行きというか・・偶然大町の食事処で居合わせた山田工務店の山田さんに誘われたのがきっかけですけどね。僕は担ぐ方ではないので一度お断りしたんですよ。そしたら“夜の神輿振りだけでもいいから”の言葉で一度担いだら、その後神輿会の入会が待っていました。後に引けずもう14年近くかな(笑)」
 

お二人にとって絵を描くという事は?

河田
「僕は、絵を描く意欲や湧き上がる創作意欲って自発的というよりはクライアントや依頼者がいて何かテーマがあって描く方なんですよ」
久保田
「えっ?僕は逆だなあ。どちらかと言うと自分の中にある内発的なものを描きたい」

その言葉とは正反対に、河田さんは京都市立芸術大学の油画科を卒業、久保田さんは東京藝術大学のデザイン科を卒業され、学ばれた過程とは違う価値観にお二人とも到達された様です。

久保田
「あっ 西と東で場所も反対だね。笑)」一同談笑

みこし会に対しても絵を描く事にしても捉え方の正反対なお二人がどの様な視点で大町まつりポスター原画を制作されたのか益々興味深くなりました。

大町まつりポスターの原画はどのように制作されましたか?

河田
「前年の久保田さんがイラスト調だったので最初は神輿を理論的に捉える絵図にしようかと思って、神輿を測ろうとしたら“神様は測り知れない計ってはいけないもの”ということを伺いこの案はボツとなりました。そこで2案目の墨絵か3案目の和をテーマに祭りを捉えるものにしようかと。祭の雰囲気“味”を出したかったので。その発展で“味”を出すには版画がベストかなと決めました」
久保田
「前年の竹腰さんの原画がアート色だったので、二年目の原画には縛りが色々多くて。でも何せこれは仕事ではないから、プレゼン無しの一発OKを条件に引き受けたんだよ。もちろんその一発の為に色々悩んだけどね。プレゼンをしなくちゃいけない河田さんの様な状況だったら断ってたよ(笑)」
河田
「生み出す苦しみと言うよりは、版画を彫る方がとても大変でした(笑)心が折れそうになりましたよ」
「でも、あえてデジタル加工はせず手彫りにしたのはやっぱり“味”なんです」
久保田
「うん、“味”を出す事に成功してるよね。僕の場合は、表現の手段は考えなかったな。目的はポスターを見てもらう事、知ってもらう為に目立つものを考えていたね」

ポスターの原画として依頼者のテーマを汲み取り、形のない雰囲気の「味」を出すために、学んでいない版画に挑戦され、見事に臨場感のある粋な表現で祭りの全体像を捉えた河田さん。ポスターとしての目的を明確に意図として、より目を引かせる為に構成しながらも独特な線の抑揚や柔らかい色合いの配色で、目に見えない静けさ(神事)をも感じさせる久保田さん。

河田さんは自己実現のアートを学び、他者実現のデザインを生業へ。久保田さんは他者実現のデザインを学び生業から、自己実現のアートの道へ。

原画制作にあたってそれぞれの大町まつりへの視点は、お二人が学生の頃に学んだ出発点が大人になった今も「物事の素直な視点」として残っているのかもしれません。

お二人ともお仕事の傍で制作していただき本当にありがとうございました!!

久保田潤
Kubota Jun

1956年 東京生まれ
東京藝術大学デザイン科卒業
卒業後広告デザインに従事
2009年より画家として活動。水彩画や油絵を発表

 
河田雅彦
Kawada Masahiko

1970年 京都府生まれ
京都市立芸術大学美術学部油画卒業
卒業後デザイン会社にてグラフィックデザイン・WEBアートディレクションに従事。現在楽天グループ勤務

あとがき

対談している先輩方のお話を伺いながら、私の場合とこっそり照らし合わせました。初年度は「好きな様に描く」がテーマ。本当に思う様に描いた自分がちょっと恥ずかしくなりました。でも良いのです。お祭り事なので(笑)

お二人
「来年の制作者はもっと大変だーーー!」

初めて意見が揃ったお二人でした(笑)

2018年6月 取材
聞き手・対談進行:竹腰桃子