石川屋酒店
石川順子さん

大町四ツ角を北へ10数メートル入ると、左手に歴史を感じる佇まいの酒屋が見えてきます。
それは最近、人気漫画のシーンにも登場した創業八十三年の老舗、石川屋酒店です。

この石川屋酒店を営むご夫婦は、大町まつりの縁の下の力持ち的存在。古くから祭にかかわり、日常若い衆に慣習を伝承しながら、そして祭が近づくとその準備で大忙し。店の明かりは、いつもは真っ暗な大町の帰り道をこの時期だけは夜遅くまで照らしています。

また、担ぎ手の受付窓口の一つでもある石川屋酒店には、祭にはなくてはならないものが大切に預けられています。

それは担ぎ手たちが羽織る半纏。

貸し出される半纏には、毎年その半纏を借りた人の名前を書き留め、翌年その担ぎ手から申し込みが入ると一度広げてほころびはないかを確認し、その担ぎ手の顔を思い浮かべながらたたみ直し「今年も事故が起こりませんように、いい神輿ぶりができますように」と一枚一枚すべての半纏に「粋(いき)」を吹き込み、また昨年と同じ半纏を渡すのだとおかみさん。

半纏には、そんな想いも込められながら、祭の夜を迎えるのです。

2013年6月 取材
聞き手:澤渡俊仁

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